幼少期の頃からいつもこの小さな公園を
使っていた。
古くても楽しめたブランコ。何度も滑った滑り台。
体重の違いを感じたシーソー。大きくなればなるほど遊具は使わずに話すことばかり。
なんてことない出来事を話しては笑ったり、
泣いたり、慰め合ったり。
部活で忙しい中学になるまではずっと一緒だった。

高校生の今では少し背伸びしたいみたいに
大人な雰囲気でまるでお城のお姫様か
王子様になったみたいのお高台に登って
街の夜景を眺めてはカメラで景色を
楽しんでいると、夜空にはウソみたいに
雲が晴れていてキラキラと輝く星が瞬いていた。

「朔斗、私、最近、ここに来て無かったんだけさ、
 あの高いところってなんだろう。
 すごい光ってる。新しくできたお店かな。」

3年前にはなかった建物が次々と増えていた。
指をさして、朔斗に聞いてもぼんやりと真剣な顔をしている朔斗がいた。

「朔斗?」

 パシっと腕をつかまれて、顔を見合わせた。
 街灯で照らされた朔斗の顔が見える。
 私服に着替えていて、
 自分だけ未だにお祭り気分。
 なんだか急に恥ずかしくなった。
 そっと浴衣の裾を整える。

「梨花、俺、お前のこと
 前からずっと考えていた。
 学校でも家にいても、
 ミャーゴが梨花の家に間違って
 行った時も本当はラッキーって
 思ってたから。」

いつもよりまっすぐな眼差しで見る朔斗が
真剣なことにごくんとつばを飲んだ。
こちらも何か返事しないといけないと
モジモジと手を触っていると、
朔斗の顔が近づいて、そっと唇が触れた。

あたたかくて、幸せすぎて心配になる。
朔斗の顔が離れていく。

「そういうことだから。」

なんだか納得できない梨花。

「え、それはつまりどういうこと??」

「ってか、言わなくてもわかるでしょう。
 空気読めよ。」

「言わなくちゃわからないことたくさんあるよ。」

「おう、んじゃ、後ろ向けよ。」

「え?」

 梨花は後ろを振り向いて、
 朔斗の指が背中に触れた。
 浴衣の帯で指がなぞっていく。

「え?背中文字?
 ちょっと待ってよ。わからない。
 もう1回やって。」

「なんでわからないんだよ。
 仕方ないな。もう1回だけな。」

 朔斗は梨花の背中にひらがなで文字を
 指でなぞった。どうしても口に出したくなかった。

 梨花は本当はなんと書いてあるか知っていたが、
 何回も確かめたくて、朔斗に要求した。
 本当かどうか不安を解消したかった。

 『好き』ってその一言が言えない朔斗の想いを
 何回も聞きたかたった。
 言葉に出さない代わりの指文字で。
 わからないふりして何回も要求した。

 いやと言いながらも朔斗は、何回も書いてくれた。

 忘れられない夏の思い出になった。

 雲ひとつない星が煌めく夜空では
 流れ星が大きく飛んでいた。

 きっと願い事が叶うだろう。

 口には出さないが、
 心の中で
 『ずっと朔斗と一緒にいられますように』と
 願っていた。