翌日の昼休み。
教室で机を重ね合わせて、
恵麻と美貴、
梨花の3人でお弁当を食べていた。

ニヤニヤとする恵麻は何も言わずに
ご飯をパクパク食べる梨花を
見つめる。


「ねぇ、今、梨花何考えているの?」

「え?何って、
このからあげ美味しいなぁとか。
卵焼きいつのタイミングで食べようかなって
考えてるけど。」

「ふーん。梨花の耳って、そんなに赤かったっけ。」

「え?嘘。そうかなあ。」

顔全体が赤くなる。
チラチラと窓際に座る朔斗の視線を気にしてる。
学校に来てから一度も近くに行っていない。
もちろん挨拶さえもしていない。

「梨花?さっきから何を気にしてるの?
そして、何を見ているの?」

美貴が頬杖をついて、じっと梨花の顔を見る。
お弁当を見ながらあっちを見たり、こっちを見たりと
行動が忙しない。

「え?何、2人して、私のこと見過ぎじゃない?」

「いや、普通に見てていつもと違うから。」

顔を思いっきり近づけた恵麻が本題に入った。
小声で梨花に迫る。

「んで?朔斗くんとどこまで行ったの?」

「ちょ、なー、やめてよぉーーー。」

明らかに反応がおかしい。
恵麻は普通に顔を真っ赤にした梨花の手で
頬を叩かれる。
なんで叩かれたのか頭に疑問符を浮かべた。

「もしかして、成立したの??」

「……その、もしかしてのもしかしてです。」

梨花は机にお辞儀する。
恥ずかしくなった。

「ちょっと、待って。
良いことなのに、なんで今私叩かれた??」

「ごめんごめん。
ついつい、興奮しちゃって。」

「興奮?! 何さ、最後までしたの?」

「…え?最後ってどういう意味?」

 美貴が耳うちで梨花に説明する。
 だんだんとお猿のように赤くする。

「いや、ムリムリムリ。 そんな、ありえないから。
もう、恵麻、想像力ありすぎだな。チューだけだよぉ。あれは、もう…。」

梨花は昨日のことを頬を両手でおさえて思い出す。
照れて、体をくねくねしている。

「思い出してるね。」

「そうだね。
 ラブラブか。何か応援してたけど、
 ここまでのろけられると、
 何だかいじりたくなる。」

 美貴は梨花の脇をくすぐった。

「ちょっと、くすぐったい。やめてよ。」

「もう、うらやましいぞ。
 私なんて、今まさに倦怠期なんだから。」

「え?そうなの? 美貴も大変だね。
年上の彼氏だもんね。」

「私だって、負けてないよ。
 するかしないかで拒否ったらむつけたんだから。」

恵麻がなぜか恋愛の不幸話を美貴と争っている。

「え?それって聞いても良い話なの?」

「あ、梨花にはまだレベルが高い話だよね。
ごめんね。」

「そ、そんなことないもん。
これから頑張って勉強するもん。
恋愛だって、学ぶことたくさんあるって
恵麻が言ってたもんね。」

「無理しないで、マイペースでいいんだよ。
むしろ、私たちじゃなくてさ・く・と・くんに
教わりな。優しくね。」

美貴はトントンと梨花の肩に触れる。

また梨花は何かを想像してしまったようで
真っ赤な顔になった。
耐えられなくなって、廊下に駆け出すと
トイレから戻った朔斗にぶつかりそうになった。
今日、初めて会話する。

「あ、ごめん。」

「お、おう。」

たった一言で終わった。
付き合っていても、お互い学校にいるときは
周りのことが気になるようで会話するのを避けていた。ほぼ無口であるのは最初の頃と全然変わりない。

梨花は、恥ずかしくなり、すぐに駆け出して
トイレに向かった。
個室に入って、呼吸を整える。

いくつ心臓があっても足りないと
深呼吸した。

まだ心臓の高鳴りが抑えられない。

昼休みの終わりのチャイムが鳴り始めていた。