鼓動が早くなるのがわかった。
教室に戻った2人はいつも通りに授業を受けた。

気持ちはいつもと違う。
なんで、ここにいるのかと疑問が生じる。
教室にいる朔斗は一体誰か。

気持ちを読み取れと言われたが、未だ信じられない。
会話をかわしてない。
授業中に交わすのは難しいのを知っている。

夢か現実かを知りたかった。

屋上であんなにたくさん話したのに教室では
無口で全然会話をしない。

授業中なのだから、話さないのは
当たり前だ。

何度も確かめたい。

梨花は好きと伝えたけれども、両想いと
判断してよかったのだろうか。

不安で仕方ない。




放課後のざわつく教室。
窓際で広大と話している朔斗にそっと近づく。

梨花は確かめたかった。

「朔斗…。」

 広大が気を使って、そっと、離れていく。

「んじゃぁな。」

「ああ。」

 広大が立ち去るのを見送って、立ち止まる。

「……?」

「あのさ。」


 梨花が話しかけようとすると、
 机の上に腰を寄りかからせていた朔斗は
 バックを肩にかけて、行こうとした。

 何も言わずにくいっと指を動かして誘導する。
 朔斗は話したくないようだった。
 ジェスチャーの判断でついていく。

 今日はテスト前週間で部活動が休みだった。
 そのまま帰れるだろうと考えて、後ろをそっと
 着いて行った。

 進展があったんだろうと恵麻と美貴に手を振って
 別れを告げた。

 それでも朔斗は何も話さなかった。

 少し離れて歩く2人。

 校舎を出るまで一定を距離を保っているが、
 周りの同級生やクラスメイトたちからは
 何をやってるんだろうと不思議がられている。

 何をこだわっているのだろうと
 梨花は朔斗の肩をポンと軽く触れた。

「わぁ!」

「ちょ、ちょっと、そこまで
 大きな声出さなくても…。」


「び、びっくりしただけだから。
 驚かすなよ。」

校門から出て数メートル。
だいぶ生徒の数も少なくなってきた頃、
朔斗はキョロキョロとまわりを見る。

「そろそろいいかな。」

「何をそんなに警戒してるの?」

「べ、別にいいだろ。」

 よくわからないが、梨花は朔斗の隣に移動して、
 並んで歩いた。
 やっと許可がおりたようだ。

「朔斗って警戒心強い猫みたいだね。」

「うっさいなぁ。」

「聞いてもいい?」

「は?」

「なんで学校でそんなに無口なの?」

「話さなくちゃいけないルールでもあるのかよ?」

「それはないけど、必要最低限会話大事でしょう。」

「いろんな問題に関わりたくないから。
 なるべく話さないだけだ。」

「???」

 過去に嫌なことでもあったのかと
 心配しながら、そのまま家路を歩いた。

 梨花は気を遣って、
 ミャーゴの話に切り替えた。
 自然と出る猫の話には
 テンション高めに会話する朔斗だった。

 興味あるものには、流暢になるものなのかと
 一つ朔斗のことを知った気がした。