食欲はないが念のためにご飯を食べた。歯磨きをきちんとして、ボサボサに跳ねた髪をアイロンで整えて少し巻いてみたりした。

洗面所でうまく巻けなくて、うう…と唸り声をあげていると、お母さんがやってきた。


「…翠?え、どっか行くの?」

「あー、ちょっと友達と勉強しにね」

「そう。ほんっとうに翠はえらいねぇ」


バカみたい、という意味で笑ってしまった。約17年一緒にいてわからないのだろうか。私が勉強したいわけない。えらくもないのに、そう思われるのはあまり良い気がしない。


―ピロンッ


久しぶりに、私はメッセージ音を耳で聞いた。開いてみると、案の定、あの人からだった。


『え、まじ』


初めて、スマホに向かって笑ってしまった。

あとのメッセージは、なんだか長文だった。時間、場所、持ってくるもの…とあった。以前から文章をうっていたのかもしれない。

こんなにきっちり伝えてくれるのか…やる気すぎて笑ってしまう。


服装は、悩んだ末に高校の制服で行くことにした。なんの関係でもないのだし、意識する必要はない。勉強するというだけだ。


送ってくれたメッセージを見て持ち物などの準備をした。上着を羽織ってトートバッグを肩にかけた。