すると突然、大きな笑い声がそこら中に響いた。


このみちゃんが一度立ち上がってカフェの奥を覗き、再び戻ってきた。


「窓際の席に葵さまがいる! 寧々ちゃん、行かなくていいの?」


「いいの、いいの」


 私たちのいる場所からは死角になっていてちょうど見えないものの、声はよく聞こえてくる。


 さっきまでは気にしていなかったけど、葵さまがそこにいるのだと分かったら会話がはっきりと聞き取れるようになった。


「明日の飛行機飛ぶと思うか? 台風でしばらく帰れなくなったりして」


「それならずっとここに滞在するのもいいな」


最初に喋ったのは誰か分からないけど、今喋ったのは葵さまだね。


向かうところ敵なしの葵さまは天候に対しても同じで、全く動じていない。


しかも逆に楽しんでいるから驚く。


「いつも一緒にいるのにね。ケンカでもしたの?」


 このみちゃんが不思議そうに聞いてきた。


「そうじゃないよ。合宿中はお互い友達と楽しみたいし、別行動しようってふたりで決めたの」


「へえ……」


 このみちゃんはまだ何か言いたげにしている。


「どうしたの?」


「あのね、昨日の夜見たんだよね……葵さまが……」


 本当に言いにくそうにしている。


「いいよ、言って?」


「男子部屋の前で、エマちゃんと……」


「え?」