ううん……こんな言葉に深い意味なんてない。


こき使っても辞めないし、便利だから……だよね。


そうと分かっていても心拍数は上がり続ける。


戸惑っていると、葵さまが私の方へにじり寄って来た。


思わずよけてバランスを崩し、ベッドから転げ落ちそうになるところを、葵さまに手を引っ張られて助けられた。


「危ないな……わざとやってるのか?」


「まさか」


 ベッドに座りなおしてお互い顔を見合わせ、しばらくして吹き出した。


「葵さま、髪が乱れてる」


「お前こそ」


 クスクスと笑っていると、不意に葵さまの手が伸びてきてゆっくりと髪を撫でられる。


 ドキッ!!


これは……整えてくれてるだけ、だよね!?


なんだか顔が熱くなってきたところで、葵さまが私の膝に転がった。


え……ええっ!?


「とにかく合宿に着いて来い。いいな」


「う……うん……ありがとう」


葵さまのお陰で、合宿に行ける……嬉しい……。


やっぱり、行きたかったんだ。


そしてそのまま、寝息をたて始めた。


 当たり前だけど、眠っているときの葵さまは本当に穏やか。


 さっき私にしてくれたみたいに、そっと髪を撫でると……


葵さまが、少し笑ったような気がした。