添い寝だけのはずでしたが

顔が一気に熱くなってどうすればいいか分からないでいると、勢い良く音楽室のドアが開いた。


「お待たせ~!」


 そこに現れたのは、ご機嫌でニコニコ笑顔の渋谷くん。


「おう、あれが1分の見本。お前とは俺への忠誠度が違う」


「どういうこと?」


「声掛けたらすぐに飛んで来る。渋谷の方がよっぽど役に立つな」


 渋谷くんが現れると、葵さまはいつもの調子。


『少しでも早く会いたかった』の真意を確認することもできず、私ひとりでまだドキドキしている。


きっとからかっただけだよね……。


私の前にお弁当を置くと、渋谷くんは近くの席に腰掛けた。


 これって私の!


「持って来てくれたの? ありがとう」


「さっき葵に頼まれた」


「そうなの!? いつの間に?」


 そういえばさっきスマートウォッチを触っていた気がするけど……その時、渋谷くんに連絡をしたのかも。


 葵さまを見るけど、目も合わせてくれない。


「役に立つとか言うくせに、俺には甘いからね。今だって、俺の課題をやってくれてる」


 今気付いたけど、葵さまの後ろにノートパソコンがある。