謙虚さが全くないところが、本当に葵さまらしい。


 結局その日は徹夜をするはずが……目が覚めるといつの間にか葵さまのベッドで眠っていた。


 部屋の外は明るくなり始めていて、もう朝なんだと気付かされた。


葵さまとは少し離れた位置で背中合わせになっている。


机から自分で移動した記憶もなく、どうしてこの場所にいるのか思いだせない。


 そっと葵さまの顔を覗き込むと、小さく寝息を立てていた。


「よかった……今は眠れているみたい」


 美しい寝顔に、つい見とれそうになる。


 こうして黙っていれば、まるでどこかの王子様のよう。


 口を開けば強気なことばかりだけど、私のために資料を作ってくれていたし、本当は優しい人なんだよね……。


 そこでふと考える。


まさかとは思うけど……葵さまがベッドまで運んでくれた?


 ううん、そんなのありえない!


 そう思うものの、想像しただけで顔から火が出そうになって、学校へ行く準備をするため慌てて自分の部屋へと戻った。


 その時葵さまがうっすらと目を開けて笑っていたことは、知る由もなく……。