添い寝だけのはずでしたが

「なんであいつ」


「部活の練習で近くを通ったの。正直、テストのことは不安だったんだよね。そのことにも気付いてくれて、親切な人に会えて助かっちゃった」


葵さまは立ち上がるなり、不機嫌そうな顔でこちらまで歩いてくる。


 そして私の前に立ち塞がった。


「宇治山の方がいいって? それならあいつのメイドになれよ」


「そういうことは言ってな……きゃっ」


私の手を取り勢い良く立ち上がらせた。


だけど正座をしていたせいで足が痺れていて、感覚が全くないことに今気が付いた。


立っていることができなくて膝から崩れ落ちそうになるところを、葵さまに抱きとめられる。


胸にしがみつく体勢になっているけど、これってすごい状況だよ!?


一気に心拍数が上がり、ドキドキしていると……。


「寧々……」


なぜか耳元で、優しく囁かれる。


えっ……どういうこと!?


 私の名前なんて覚えてないはずだし、いつだって“お前”呼ばわりで、名前を呼ぶ気なんてさらさらなさそうだったのに。


っていうか、それより!


どうしてこんな甘い展開になってるの?