振り払おうとしても、かなりの力で解くことができない。
　

痛い握り方ではなくて、しっかりと……まるで引きとめるかのように、軽く引っ張られる。
　

起きてる!?
　

そう思ったけど、葵さまの額には脂汗が浮かんでいる。


辛そうに顔を歪めていて、その姿はまるで夢にうなされているかのよう……。
　

これは起こした方がいい？


「葵さま、起きて」
　

握られていない方の手を葵さまの肩にあてて揺さぶる。


薄っすらと目を開けてまた閉じてしまった。


「うう……」
　

本当に苦しそうで、一体何が起きたのか驚くばかり。
　

体調が悪いのかも？
　

運転手さんに目配せすると、首を横に振っている。


「これは葵さまにはよくあることで……美沙さんからはそっとしておくように言われていますし、下手に起こすと手がつけられないほど暴れることがありますので危険です」
　

そんな……だからって、このまま放っておくわけにはいかないよ。


みるみるうちに顔は真っ青になり、あんなに力強かった手からは完全に力が抜けてしまっていた。