添い寝だけのはずでしたが

葵さまが私に向けてくれている好意は本物だとしても、私たちの間にはどうしても越えられない壁がある。


そんなこと、ずっと分かっていたはずなのに……。


その日の夜、葵さまが帰ってきてからも顔を合わせるのが気まずくて仕方がない。


葵さまの部屋へ行く時間が過ぎても、自分の部屋から出ることができずにいた。


 そのとき葵さまから電話がかかってきて、迷ったけど出ることにした。


「どうした? 早く来いよ」


「今日は……ちょっと……」


「だったら俺がそっちに行く」


 そうされると逃げ場がなくて困るから、慌てて葵さまの部屋へ行くことにした。


 部屋に入ると、葵さまはニコニコと微笑んでいる。


「今日は遅くなってごめん。寂しかったよな」


「え……全然……」


 つい、冷たく言い放ってしまう。


「なにかあったのか?」


 普段の対応と違ったことにすぐ気付かれて、葵さまが駆け寄ってくる。


「なんでもないの……」


 私のバカ。


 留学のことを話してくれなかったと言っても、葵さまなりの理由があるはず。


 それなのにひとりで拗ねて、こんな自分が嫌になる。


「今日は疲れたから……もう、寝よう?」