馴れ馴れしいイメージがあるし、すぐ触ってくるって葵さまが言っていたから警戒しておかなきゃ。


 すぐ近くまで来たから、一歩後ろに下がった。


「マジかー。俺のこと警戒してます?」


 コクコクと頷くと、ぷはっと笑っている。


「悪ノリしませんって。葵がいるときはあいつをからかうと面白いんだよな。ムキになって寧々ちゃんのことを守ろうとするから」


 そう言って、優しそうに目を細める。


「そんなことないよ……」


「あるんだって。葵は素直じゃないからなー。今だって、本当は寝たフリしてるだけじゃないか? おらおらっ」


 ふざけて、葵さまの頬をツンツンしている。


 その勢いで顔が揺れるけど、一向に目覚める気配はない。


「早く意識が戻って欲しい……」


「そうだよな。前にも同じようなことがあって、あの時も突然何もなかったように起きたらしいから、大丈夫じゃないか?」


「そうなの?」


 驚いた……過去にもそんなことがあったなんて……。


「知らないよな。あれは確か、俺らが金銀学園の幼稚舎の頃」


 ふたりはそんな前から一緒なの?


 それも知らなかった……。


「夏休みに滞在先で、地震の被害に遭ったんだ」


「葵さまが……?」