葵さまは意識不明の重体で、2日経った今も一度も目を覚まさない。


 私を庇ったことによってこんなことになるなんて……。


 本当に申し訳ないし、苦しくて辛くてたまらない。
不眠症でなかなか寝付けなかった葵さまが、こんな形で眠り続けるなんて誰も望んでないのに……。


私はこうして毎日病室へ来ることぐらいしかできない。


 病室に入ると、美沙さんが出迎えてくれた。


「毎日ありがとう。葵さまはこのような状態だし……寧々さんも、できるだけ早く普段の生活に戻ってね」


「ありがとうございます……」


 普段の生活にと言われても、葵さまがいないお屋敷は日常とかけ離れている。


 葵さま中心の生活だったし、今はお屋敷にいてもただボーっとしてしまうだけ。


 学園でも友達は気遣ってくれるけど、なにかが足りない気がして……ふとしたときに、葵さまを探していることに気付く。


 こうして学園帰りに病院に寄って葵さまの顔を見ることを楽しみにしている。


もしかして、目を覚ましているかも……って。


期待しながら顔を覗き込むけど、葵さまは穏やかな表情でただ眠っている。


「こんちはー」


 明るい声が部屋の入口から聞こえて、振り向くとそこに渋谷くんが立っていた。


軽く会釈をすると、美沙さんは席を外した。


 いてくれた方がいいのにな……。


 私も渋谷くんにぺこっと挨拶をする。


「なんだよー、クラスで会ったじゃん。他人行儀だなっ」


 他人ですけどね……。