そうだよな……合宿のときも、こうだった。


もう手元に置いておこうと思ったのに、つい焦って関り方を見失ってしまった。


だけどもう、同じ間違いは二度と繰り返さない。


「聞いて欲しいことがある……」


 いったん体を離し、寧々の涙をそっと拭う。


 真っすぐに俺を見る瞳が愛おし過ぎて……言葉が詰まりそうになる。


 自分の気持ちを伝えたい……。


 返事はノーかもしれないと分かっていても。






「俺は……」


言葉を発しかけたとき、天井から瓦礫が崩れ落ちてきた。


とっさに寧々に覆いかぶさると、何か大きな物体が当たったのか体に衝撃が走った。


「うっ……」


寧々の手を握ると、ギュっと握り返された。


 そんな些細なことが嬉しくて泣きそうになる……。







「早く!! 人がここにいます」


 遠くから複数の声や足音が聞こえ、一気に取り囲まれた気がした。


「葵さま、やだっ……しっかりして……」


 そして大好きな人の声が、だんだん遠くなっていく。


 俺はどうなってもいいから……寧々を守れたなら、それでいい……。


 薄れゆく意識の中で、寧々の顔が目に浮かぶ。