そういうジレンマを渋谷が汲み取ってくれて、自分の弱さに嫌気がさす。


 強引にして、また寧々に拒否されたらと思うと……怖い。


 まさか自分がこんな風になるなんて想像もつかなかったな……。


「まずいな……」


 渋谷が眉を寄せて唸っている。


「どうした?」


「準備も終わって解散したらしいけど、宇治山と連絡が取れないって。おまけに寧々ちゃんを体育館で見たやつがいる」


「それのなにがまずいんだよ。寧々のことだから、後片付けとか引き受けてるんだろ」


「体育館に……エマちゃんがいたって。寧々ちゃん大丈夫かな……」


「それを早く言え」


学園へと急ぐタクシーの中で、寧々に連絡を入れるけど通話も繋がらないし、メッセージにも返信はない。


出られない状況なのか、拒否されているのか……。


学校にいる間は音を消しているから、気付いていない可能性もある。


渋谷が誰かと連絡を取っていてその内容に青ざめた。


「エマちゃんと? 旧校舎の方に向かったって?」


 旧校舎は、取り壊す予定で……確か、今週だったはず。


 いつだ……?