放課後、寧々は学祭の仕上げがあると言って、いつものように体育館係とべったりだ。


 実に面白くないけど、口を出せば俺にも手伝えと言ってくるから先に帰ることにした。


渋谷と待ち合わせて、よく寄るカフェで時間を潰す。


「おい、迎えに行かなくていいのかよ~」


「うるさいな……」


 さっきからしきりに、寧々を学校まで迎えに行けと俺をけしかける。


「学祭の準備、宇治山と一緒だよな。あいつが寧々ちゃんを見る目、普通じゃないぞ。お前以上にやばい」


「俺がなんだって?」


 渋谷を睨むと、ヘラヘラと笑っている。


「取られちゃうぞって話」


「はーっ……まあ、相手にしてないけどな……」


「顔色悪いぞ~。宇治山が、結構いい仕事するんだよ! できなそうで、できるやつ? 今頃そのギャップにやられてるかも」


ガタッ。


 気が付けば立ち上がっていた。


「ほら、行けよ」


「いや、やっぱりいい。家に帰ればいるしな。しばらくは今の状態を続ける……」


「うわ~、こっちが心配になる! ちょっと待ってろよ。体育館係のやつに、ふたりが今どうしてるのか聞いてみるから」


 おせっかいなやつめ。


 だけど俺は、こんな渋谷に救われている。


 それも分かっている……。


 今、寧々がどうしているのか知りたいし、できればずっと側についていたいけど、そういうわけにもいかない。