制服に着替えたあと玄関を出ると、目の前に黒塗りの高級車が停まっていた。


運転手さんが後部座席のドアを開けると、颯爽と現れた葵さまが車に乗り込む。


そして私にも乗るように促し、ふたりで学校へと向かう。


高級車だからか外の音があまり聞こえず、会話もなく車内は静まり返っていてとっても気まずい。


隣に座っている葵さまは腕組みをして、じっと前を向いたまま何も話さない。


さっきから何度か話し掛けるけど、完全に無視されている。


出会った時から冷たい雰囲気を醸し出しているのは分かりきっていた。


それでも、なんだか別人のよう……。


私も前を向いていたら、軽く肩を叩かれた気がした。


葵さまに呼ばれたのかと思い横を向くと、目の前に葵さまの顔があった。


うわあっ!


思わず声に出しそうになったけど、ぐっとこらえる。


……眠ってる!