添い寝だけのはずでしたが

「最初は、BBBのシオンの話題だったの。超人気アーティストだし、会えるって言われたら信じるよね?」


 私は会えるとは言われてないけど、それって定番の話題なんだ。


「だけどシオンには会えなくて……。最初は駆け出しアーティスト、だんだんランクが上がっていって、テレビに出ているような有名人に会わせてもらえるの。だから多少エマちゃんに嫌なことを強要されても、やるしかないっていうか……」


「そうだったんだ……」


「だけどもうエマちゃんには貝殻のピンを返して、きっぱり辞めたからね? あの合宿ですっかり目が覚めたの。寧々ちゃんに助けらえたのもあるし、もっと現実を見ようと思った。手の届かないアーティストより目の前の王子だよね」


 お、王子?


 宇治山くんに続いて、このみちゃんまでもがそんなことを言い始めた。


「寧々ちゃんが譲ってくれたあのバスで、王子に出会えたの」


「そうなの?」


「エスアイツーリストの添乗員さん。普段は本社の企画室で働いているらしくて、あの日は特別に沖縄まで来ていたみたい。

親切に介抱してくれて、非常時にもテキパキしていて、すごく大人で……好きになっちゃったんだ~。名刺をもらったから連絡先もバッチリだよ!!」


「ちゃっかりしてる。このみちゃんって、本当にミーハーだよね。シオンもオウジも私からしたら同類」
 

千咲ちゃんの言葉に、ここにいる全員が苦笑している。


 まあそれで、エマちゃんから離れて違う世界に目を向けられるなら……それでもいいよね。


 買い出しも終わりカフェで時間を過ごした後、宇治山くんがタクシーで送ってくれることになった。


さすがに葵さまの家まで行くわけにもいかず、近くの駅で降りることにして深々と頭を下げてお礼を言う。


「送ってくれてありがとう。ここからはひとりで大丈夫」


「うん、今日は楽しかった。今度はふたりで出かけようよ」


「……えっ?」