「嬉しい……ありがとう。いいの?」


「ああ。マナーとか気にしなくていいから、好きに過ごせよ」


 このホテルの中にいること自体場違いではあるし、会員制と聞いて躊躇しそうになったけど、そう言ってもらえると安心することができた。


 葵さまは入口に立っているスタッフに合図をすると、颯爽と店内へ入って行く。


 すごい……顔認証なの!?


 どこに機械があるんだろうと思って見回すけれど、見つけることなんてできない。


 葵さまに続いて歩いていると、スタッフが私たちに一斉に一礼し、なんだか急に偉い人になったかのような錯覚を受ける。


そして、前を通るだけで自然と背筋が伸びた。


「そんなに緊張しなくていい」


「う、うん……慣れなくて……」


 葵さまと窓際の、見晴らしのいい席についたあと、料理を取りに行くことに。


たくさんの美味しそうな料理に目移りしてしまう。


そしてふと横を見ると……隣に立っているのが有名なミュージシャンであることに気付いた。


ほっ、本物!?


周りを注意深く確認すると、テレビでよく見かける司会者やタレント、スポーツ選手が普通にすぐそこにいる。


自分がここにいることが信じられない……。


テーブルに着いてからも、周りにいる人全てが著名人のような気がしてしまい キョロキョロとしてしまう。


そこで葵さまと目が合い、ハッと我に返った。