「なんだか今日はにぎやかっすね」


 田中が外を見ながら声を出す。

 その日の夜は確かに人が多かった。


 いつの間に降り出していたのだろう。

 窓ガラスを、小さな雨粒が覆っている。


 コンビニ前の通りを、人の波が行き過ぎる。

 似たような服装と化粧をした連中が自動ドアを開け、

 店内にもすぐに人が溢れた。


 濡れたコートが目立つ。

 傘を買う客が多く、数本あったビニール傘はあっという間に無くなった。

 
 傘を買いそびれた雨宿りついでの客はなかなか出て行かない。

 興奮した様子で話す声に耳をすますと、曲やMCについての話題で盛り上がっている。

 近くのホールでライブでもあったのだろう。

 
 それからしばらく、店内に人が溢れたままで時間が過ぎた。

 冬にもかかわらず、湿気を帯びた空気が広がっていた。