クリスマスという日が意味を持ったのは何年ぶりだろう。

 イブの前日に俺は小川さんへの贈り物を買っていた。

 鬱陶しいだけだったイルミネーションの中に自分が溶け込んでいるのが不思議でもあり、可笑しくもあった。


 パートや他のアルバイトとのシフトの都合上、24日はやはり休むことができず夜勤に付くことになってしまったけれど、

 25日は小川さんとふたりで過ごすことを約束していた。


 約束といっても大したものじゃない。

 いつものように俺が彼女の部屋に行くことにしているだけだ。

 ただその日はケーキを持っていくからと伝えてある。

 それだけが約束にも似た会話だった。


 俺が予想したとおり今年のサンタ役は田中になった。

 二着用意されたうちの一着は店長が夕方からの勤務で着用していた。

 誰も着たがらなかったようで、俺と田中が交代で店に入っていくとサンタの格好をした店長は決まり悪そうな笑顔を浮かべていたけれど、それが案外似合っていて田中と顔を見合わせて少しばかり笑った。


 サンタの衣装を着た田中は、動きまでそれに近いような真似をして接客を楽しんでいる。

 田中の陽気さは、今日みたいな日に一人で店に訪れるような客にも笑顔を作らせていた。

 こいつはたぶん、客商売に向いているのだろう。


 これから先、大学を卒業した田中はどんな職業につくのだろうと、

 サンタの格好をした田中を眺めながらそんな年寄りじみたことを考えている自分に苦笑いが漏れた。