暁家へ。
陽が鍵を開けて中に入る。
「おじゃまします」

リビングでお茶をいただく。
「おいしい」
「よかった」
しばらくの沈黙。
膝においた手に優しく陽は手をかぶせる。

「渚」
名前は何度も呼ばれているのに、
雰囲気もあってドキッとした。
隣にいる陽の目は熱を帯びて期待しているような。
私の頬を撫でる。
ピクッと弾んだ体にクスリと笑った。

「キスしたい」
「え、」
親指で口元をなぞる。

「さっき、あの人がキスって面白がってたけど
その時からしたいなって」
ジッと顔を見つめる陽。
でも怒っている様子はない。
(私のことを気にかけるからだろうな。
少しの戸惑いとかも見逃さないために。
紳士で、優しくてそういうところが)

「好きなんだろうな」
「え、」
意図せず出た言葉に2人して顔が赤くなる。

「ご、ごめん。急に」
少しずつ陽の顔が近づいてくる。
「は、る?」
「ごめん、待てない」

囁かれて唇が重なる。
触れるだけの軽いキス。
(渚/陽にとってはファーストキス)
それでも私をときめかせるには十分で。

「はる、」
まだ収まらない胸の高鳴り。

「渚、知ってる?
キスの場所に意味があるって」
陽の目は笑っている。
「意味、て。!」

頬にキスをした。
髪、額、瞼、耳、手首。
「意味は自分で調べてね。
教えちゃったらつまらないからね。
そして唇は深い愛情。
大好きだよ、渚」 
ニコッと笑い、手を握る。

(また口にキスかと思った。恥ずかしい。
私が求めてるみたいじゃん)
羞恥に耐えられなくて顔を逸らす。
でもすぐに両手で顔を挟んで向かせる。

「キスかと思った?」
言い当てられたことに視線は右往左往。
笑いが溢れて陽はパッと手を離す。
「な、」
「ほんと、かわいい、渚。
でも今はここまで。
なにか飲み物用意するね」

からかっている陽にモヤッとする
(なんか子供扱いしてない?
私の方が年上なのに。
・・・彼女からでもいいよね?)

「陽、」


一度だけのキスで我慢するつもりだった。
がっついてるって思われたくないし、
スマートで居たかったから。
想いが通じ合ったばかりだから。
でもトロンとしたした渚が可愛くて
唇以外にたくさんキスをした。

これ以上は理性がもたない気がして
適当言って頭を冷やそうと離れる。

呼ばれて振り返ると渚に唇を奪われた。
「人の気も知らないで」

ー理性なんてどうでもいいやー

「陽?」
なにか呟いたと思ったら、手を引かれる。
「え、ちょっと」
階段を上がって手前の部屋に連れ込まれる。

「ここは?」
「俺の部屋です」
(部屋!?
というか今鍵かけなかった!?)

ゆっくり近づいてくる陽。
後ずさるとベットにあたり座る。
「あの、陽さん?」
肩を押されて倒され、陽は馬乗りになった。
スプリングの音がやけに大きく鳴る。

「渚が悪いんだよ。俺を煽るから」
「あ、煽ってなんて」
自分の心音がうるさい。
うるさくて陽の声は遠くから声を張っているような
感覚。

「渚が思っている以上に俺はあなたのことが
好きです。優男を演じる余裕がないくらいに。」

陽の目はギラついている。
獣みたいと初めて見る表情に胸が高鳴る。

(敬語だったりそうじゃなかったり余程
余裕がないんだろうな)
「渚、嫌なら逃げて。はっきり拒絶して。
途中でやめて。焦らないから」

「陽」
目を閉じれば
「・・・忠告したからね」
再び重なる。