私の可愛い(?)執事くん

「遊園地?」
「そう、1日だけ思いっきり遊ぶの!どう?」
冬休みが始まる直前。

登校してすぐ
伊吹から持ちかけられた話。

「母さんが職場でチケットもらってきてさ、
おれたちに、て。
ちょうど6人でいけるから修学旅行のメンバーで!」
「多分、いけると思う」
「りょーかい、他のやつにも声かけとく!」

昼休みになる頃には女子にも声を掛け合えてみんな
いけるらしい。
「じゃあ、あとは放課後にメールするから」

夜、グループチャットで25日に行くことに決まった
(25ってすごく混みそうだけど、まぁいっか)
お嬢様とリーダーに話すと、OKはすぐに出た。
次の日、学校でチケットを受け取り冬休み突入。

ー25日ー
校門前で待ち合わせ中。
吐く息が白く寒さで耳が熱い。
(早く着いたとはいえ辛いな)
マフラーで口を覆い待つ。

「おはよう、暁。今日も冷えるな」
「おはよう、三上さん。そうだね、
早く来てくれないかな」
三上さんも寒さで頬が赤い。

「三上さん、ちょっと自販機見ない?」
「あ、うん」
近くの自販機で俺はコーンポタージュを買う。 

「三上さんは何飲むの?」
少し悩んでココアかなと呟く。
お金を入れてボタンを押すと慌てる声。

「あ、悪い。お金返すから」
「大丈夫だよ。気にしないで。
俺が言い出したんだから」
「あ、ありがとう」
「みんな来る前に証拠隠滅しよっか」

校門前のベンチに座る。
一口飲むとじんわりと暖かくなる。
「おはよう、しーちゃん、暁くん」
吉田さんはハッとして
「自販機見てくるね」
と足早に行ってしまった。


「どうしたんだろう」
「さあな」
自販機に行った吉田さん。
ずっと眺めている。
「悩んでるのかな」
「・・・どうだろうな」

飲み終わった缶を自販機横のゴミ箱に捨てる。
「迷ってるの?」
「どれも美味しそうで」
笑う吉田さん。
他の3人も来て、ベンチで話していると
吉田さんも自販機から戻ってきた。

「よかったの?」
「うん、また今度にするよ」

電車に乗って遊園地へ移動。
「どこから行く?」
入場の際に渡されたパンフレットを見ながら、
伊吹は楽しそうに聞いてきた。

「あそこでいいんじゃない?
近いところからでいこーぜ」
浅田が指差す場所は空中ブランコ。

係員がベルトを確認して、ブザーと共に足が
浮き始める。鎖も冷たいし、素肌を刺すように
風も冷たい。
(寒い)

ブランコから降りたら手を擦る。
「寒かったな」
伊吹は笑ってまたマップを見る。

「全種類、制覇しちゃう?」
吉田さんの言葉に伊吹が反応して次のアトラクションへと足を早めた。
「なら次はあれだ」
伊吹が指を刺して列を目指したのはメリーゴー
ランド。

「抵抗がある」
「俺もそう思う」
動揺している浅田に同意するも、伊吹はノリノリで
列に並んでいた。

「せっかく来たんだから乗っちゃえば?」
「無理にとは言わないけど」
「他人の顔なんていちいち見ないだろ」

女子3人にそう言われて
(なんかここまで言われて乗らないっていうのは
なんか負ける気がする)

浅田もそう思ったのか、ため息をついて
「乗る。暁は?」
「1人だけ待機っていうのはちょっと。
俺も乗るよ」

覚悟を決めると伊吹が走ってきた。
「並んでたんじゃないの?」
「いや、流石に1人ははずいから抜けてきた」
また列に並び直して、自分たちの番がきた。