「暁、文化祭に行かない?」
文化祭の振り返り休日の夜にそうメールが入り
差出人は浅田。
(珍しいな、浅田から遊びの誘いなんて)

理由を聞くと浅田の進学先の候補の一つにある
星宮。その学校を見てみたいらしい。
了解とだけ送って勉強に戻る。

当日は星宮の校門に集合して、
校内に入る。
よかったらどうぞ、と昇降口でパンフレットを
もらった。

「あ、コスプレカップルダンスコンテストなんて
あるんだ。ていうか名前ながいな」
「そうなんだ、あ、あった」
カップルダンスコンテスト
その一つに源 渚の文字。
その隣には 月島 薫。
(この2人が出るの?いや、まず付き合ってたの?
これだけのため?でも、もし本当に付き合ってたら)

「暁、どうした?」 
肩を叩かれて目を向けると、不思議そうな顔。
「なんかあった?」
「特にこれというのは」
「そっか、俺気になってる場所があるんだけど」
パンフレットを閉じて浅田の後をついていく。

浅田とまわってコンテストの時間が近づくか。
「ちょっとみたいものがあるんだけどいいかな?」
「いいよ、ずっと俺が連れ回してたようなもんだし」

暗い体育館、パイプ椅子に座る。
「知り合いでもいるの?」
「・・・まぁね」

「2年生の最後のペア。
コンセプトはお嬢様と執事です!」 

ステージにいるのは間違いなくお嬢様と薫さん
だった。
ゆったりと踊っていたのは最初だけ。
途端に激しい動きに変わった。

細かなステップなのにフリは大胆で、まさに
2人だけの世界。

曲のラスト、薫さんがお嬢様を抱き上げて回る。
フリなのか、薫さんの思いつきか。
見つめあってる2人にまた嫌な感情が渦巻いてくる。

薫さんがお嬢様を抱きしめた時は心底驚いて
頭が真っ白になった。

ステージ袖に2人が消えてから思考が戻ってくる。
俺の気持ちを知っておいて、とか薫さんはどういう
つもりなんだ、とか
そういう考えでいっぱいで気がついたら全ての
ステージが終わっていて、体育館が明るくなり
浅田に声をかけられていた

「大丈夫?暁」
「うん、ごめん、急に明るくなったからかな」
(とにかく、まずは確認しないと)

お嬢様、帰宅後。
「薫さんとお付き合いしているんですか?」
「え?」
きょとんとした顔、いつもは可愛いと思えても
今はとぼけているように感じてイラッとしてしまう。

「もう一度聞きます、お付き合いしているんですか?薫さんと」
「してないよ、」
「じゃあ今日のあれは出演者なだけだと」
「うん」
首を振ったり頷いたりする彼女の頭を触る。

「そうですか、少し立ってくれますか?」
立ち上がる彼女を抱きしめる。
彼女の小ささに驚いた瞬間、肩を叩かれて
距離を取らざるをえなくなった。

「ごめんなさい、ちょっと」
視線を外して胸の前にある手。
(拒絶、か)
「お嬢様、薫さんは受け入れたじゃないですか」
「受け入れたっていうか、離れられなかったって
いうか、ステージの上だったし」

苦し紛れの言い訳と思ってしまう。
本当は彼が好きなんじゃないか、
だから薫さんに抱きしめられた時
拒否しなかったんじゃないか、

そんなことで頭が支配される。
(だったらいっそ、伝えてしまおうか、
行動に移してしまおうか)
「渚さん」
顎に手を添えて視線を向かせる。

(唇を奪ったら意識してくれるかな)
「陽?」
唇に触れるまで後少し