ー放課後ー  
帰宅後、私は薫が帰ってきたのを確認して廊下で
呼び止める。

薫は電車通学。
明希さんは一緒に送迎することを提案したそうだけど
薫が断ったと、さっき聞いた。
「薫、手、大丈夫?」
「大丈夫ですよ〜、おじょー様に何もなくて
良かったです。」
手を振っている薫に安心。
気になっていることを聞いてみた。

「なんでうちに転入してきたの?」
「・・・必須だったんです」
「必須?」
「バイトの条件」
「・・・バイト!?」

思わず聞き直した。
「あなた、バイトでウチに来たの!?」
「そうですよ〜。
なんか高収入のバイトないかな、と。
それで面白いものだったら尚、いいなって
そしたら電柱に張り紙してあって、」

「で、電柱に?」
「はい、」
「詳しくはこちらのURL、と」
「えぇ、そんな怪しそうなの見たの?」
「執事?転校?って思いましたけど
お給料良し、食事付きだし、住み込み個室付き。
、転校したら学費免除と書いてありまして。

逆に怪しいって思って応募する前に働く場所を見に
来たら豪邸だし外にいた執事たちも楽しそうでした
から大丈夫かなって思って応募したんです」
「そうだったんだ」
(苦労してるんだな)

「でも、身辺調査されるとは思いませんでした〜」
「え、しん、・・・え、」
「URLにも書いてあったんですけど、
面接して言われたんです〜。
書いてあったけど身辺調査させてもらうけどいい?
って。別に借金のことも言いましたし
もう隠してることもありませんから、
いいですよ〜て。
それで、一週間くらいしたら明日から来れますか?」
「か、軽いね。面接ってどこでやったの?」
「指定された日時にあなたの家の応接室?
みたいなところでリーダーが面接を」
「な、なるほど」

走ってくる足音が聞こえてきて陽が僕とおじょー様 の間を滑り込んだ。
「なんであなたが星宮の制服を着ているんですか」
「見てわかるでしょ〜、
星宮の生徒になったからだよ。」
(陽、すごい顔してるな〜)

「とりあえず、戻ろうよ」
「そ、そうですね」
おじょー様の声に陽は向き直ったが
陽は僕を警戒していた。

「では、ご用があればお呼びください」 
「わかった」
部屋に戻ると陽が露骨に嫌な顔をして
待っていた。

「どうしたの〜?陽、そんな顔して」
「気に入らない」
呟きたと思ったらキッと睨む。

「気に入らないんです。はっきり言って、
あなたが!」
「え、えぇ〜。そんなこと言われても」
「ちなみに学年は?」
「2年だけど」
「ま、まさかお嬢様と同じクラスですか!?」
ズイッと近づく陽を宥める。

「そ、そうだけど落ち着いてよ陽」
力が抜けたようにその場に座り込んだ。
「だ、大丈夫?」

「私生活だけでなく学校まで一緒だなんて、
なんて羨ましい、俺だって同い年だったら
いつでもお嬢様のおそばに」
「陽、戻ってきて〜」
ぶつぶつと喋る陽に若干の恐怖を抱きながら
呼ぶ。

「陽、そろそろ行ったほうがいいんじゃない?
リーダーのところ」
ハッとして陽は咳払いをして立つ。

「と、とにかくお嬢様とあまり近づきすぎないで
ください」
そう言って走って行った。

「余裕がないんだな〜、陽。
みてておもしろい」