別荘から帰ってきてしばらく宿題をしたり、
書店で買った高校受験対策本で勉強したりして
夏休みの残りが1週間になった頃、
グループチャットにメールが入った。

「夏休みの間に一回くらいこのメンバーで
遊びに行かない？」
言い出したのは伊吹。それからどんどん話は広がる。

「どこにいくの？」
「遊園地とか？」
「暑いから却下」
「涼しいところからいいな」
「プール？」
「混んでそう」

「この時期どこも混んでるでしょ」
既読は５つついている。
(全員が見ていて既読スルーは、・・・三上さんだ)

そのあとは俺と三上さんを除く画面上で話し合い。
最終的に水族館に決まった。
「火曜日あたりに行こうと思うんだけど
空いてる？」
浅田の文章にみんなスタンプで行けると返している。

一応、お嬢様とリーダーに相談したらあっさりOKが
出たためスタンプで返すと最後に三上さんが
行けるスタンプを送った。

(別に暁が行けるから行くって言ったわけじゃなくて、行かないと空気読めないとかって
思われそうだから行けるって言っただけで別に
他意は・・・)

ー当日ー
「では行ってきます」
「いってらっしゃい、陽」

集合場所の学校に向かう。
(よかった、誰もきてない。まぁ、待ち合わせまで
15分あるし。誰かを待たせるのは嫌だしな)
「早いな、暁」
「おはよう、三上さん
早いね」
「おはよう。まぁ、待たせたくはないし」
「俺も」

(暁の私服、かっこいいな。
制服しか見たことなかったから新鮮。)

浅田、吉田さん、木村さん、そしてやっぱりというか
伊吹が最後だった。
電車で水族館に向かう。

電車はとても混んでいてすし詰め状態。
(考えることはみんな一緒か)
壁に寄りかかったり手すりに捕まったりそれぞれ
耐えている。
(狭いし暑いな、)

各駅に止まるたびに体が揺れる。
(あと二駅)
隣にいた三上さんと肩がぶつかる。
「ごめん」
「いや、大丈夫」

目的の駅について押し流されるように電車を降りる。
そこからバスで移動。
(来るだけで疲れた)

チケット販売機で買って機械に通して入場する。
受付けの横にスタンプ台とシートが置いてある。
各エリアのスタンプを全て押して受付けに渡すと
記念品がもらえるらしい。

「面白そう」
吉田さんが食いついたためやることに。
「ねぇ、なんならペアで回らない？」
伊吹は用紙を3枚取った。

「ペア分けは？」
浅田の疑問に木村さんは伊吹を、吉田さんは浅田を
指名した。
(じゃあ、俺は三上さんとか)

女子2人は指名した男を引きずるように連れて
その場を離れた。
「・・・ずっとここにいるわけに行かないし、
行こうか」
「そうだな」

(あの2人、離れる時こっち見てニヤけやがって。
ていうか言ってないのになんで分かんだ。
女の勘ってやつか？)

スタンプは全部で12種類。
ただ水槽を見るだけじゃなく、ショーや体験も
スタンプリストにあるため思ったより骨が折れそう。