ー女子部屋ー
「恋バナしようよ」
風呂上がりで部屋に戻ってさっさと寝ようとしたら
捕まった。

「きっと男子たちもやってるよー」
吉田にそう言われてちょっと気になってしまった。
「わかった」

「やっぱりこういうのはうちのクラスで誰が1番
かっこいいか、じゃない?」
「かっこいいか、・・・あ、暁は?」
クラスメイトの言葉にドキッとする。

「あー、暁か。」
「顔良し、頭良し、性格良しの
三拍子じゃん」
「運動神経もいいしね」
同じ5班の3人をよそに盛り上がる女子たち。

「去年の学校祭の準備の時の話なんだけど。
重い段ボールの上に模造紙を載せて運んでたんだ。
でも、模造紙落としちゃって。
その時通りかかった暁くんが模造紙拾ってくれて、
ダンボールどこに持ってくのって目的地まで
運んでくれたんだ」

「新幹線で陽くんと隣だったんだけど、
具合悪くなっちゃって。陽くん、察してくれて席
変わってくれたの」

「千本鳥居で体力ないからだんだんみんなと距離が
遠くなっちゃった時、暁くんみんなと別れて
私に合わせてくれたんだ。」

学校祭の話が終わってから吉田と木村が付け足して、
さらに盛り上がった。
(なんだろう、聞いてていい気分はしない。
悪口言ってるわけじゃねぇのに)

「でも、仮に暁が彼氏になったとして刺激がなさそうじゃない?」
「刺激?」
「あー、確かに。
彼氏は、普段は優しいけど二人きりになると強引な感じなのがいいよね。自分だけが知る姿、みたいな。
暁くんはそういうのなさそう」

「わかる。イメージできない。
付き合ってもずっと受け身って感じ。
陽とお似合いの人って言ったら・・・
詩織ちゃん?」

全員の視線が私に向いた。
「・・・え!?」

「あ、赤くなってる。かわいいね、三上。
もしかして気になっちゃった?暁のこと。」
「まさか、」
「確かに、二人とも成績上位だし。
ちょっとキツめの三上と穏やかな暁。
王子様系とクーデレって、相性よさそう」
「ク、クーデレ!?」

その後も恋バナは続いて先生が見回りに来た
タイミングで強制終了。
目を瞑っても恋バナのことが気になってしまう。
正確には暁とお似合いだと言われたこと。

和菓子作りの時の真剣な顔に正直見惚れてしまった。
その後、笑いかけてくれたけど何故か恥ずかしくて
無愛想になってしまった。
(みんなが変なこと言うから意識するように
なってしまった)

3日目。
ー男子部屋ー
「なんだかんだで今日で最後かー」
「あっという間だったな」
朝、朝食を取って部屋でジャージから制服に
着替えていると伊吹が他の班の子と話していた。

特に問題なく旅行は終わり帰りのバス。
隣の席は三上さんだった。
リュックからメモ帳とシャーペンを出す。
「三上さん」
(もしかして具合悪い?)
メモを見ると窓の方に顔を向ける?
「べ、別にそんなんじゃねぇよ」
「そう?」
(なんか元気ないような)

(あー、暁に心配させちまった。
気を遣ってメモで聞いてくれて。
暁、字綺麗だったな。いや、そうじゃなくて)

悶々としているとまた声をかけられた。
「三上さん」
「なに」

「俺の後ろにいる浅田が飴くれたんだ。
どっちがいい?」
手にはショートケーキ味とプリン味が
載せられていた。

「なら、プリン味」
偶然に触れた手に少しドキッとした。
「あ、ありがとう」
(甘くて・・・苦いな)


学校に着くとすっかり暗くなっていた。
各自、保護者が迎えに来て帰って行く。
暁の迎えには赤髪のお兄さんが来ていた。

「詩織」
「母さん」
「楽しかった?」
「まぁね」

この修学旅行で分かった。
私は暁が好きだ,