匿名希望Aが死んだ?
だから連絡がこなかったのだ。

でも、どうして?
父親がいなくなってこれから自由になるんじゃなかったのか!?

俺の背中にダラダラと汗が流れていく。
匿名希望Aがいないんじゃ俺はなんのために人を殺したんだよ……!

頭をかかえてうずくまった瞬間、気がついた。
俺は匿名希望Aの顔を見たことがない。

あの家の中でも、匿名希望Aを見なかった。
もし、あの寝たきりの老人が匿名希望Aだったとしたら……?

あの老人は全く抵抗しなかった。
首を締めている間1度も目を覚まさなかったのだ。