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「はい、じゃあさっきのシーンから!」
智子の言葉を合図にしてみんなが移動する。
死体役の子は横になっているだけなので、すでにスタンバイ済だ。
そして演技は続く。
「いいね! 全然動かなかったじゃん!」
横になっているだけといっても腰が痛くなったり、体がかゆくなったりしてどうしても少し動いてしまう。
だけど今回は少しも動かなかった。
上から見ていた智子が死体役の子にかけよったとき、床に血が滲んでいることに気がついた。
死体役の子はまだ動かない。
顔色は悪く、胸も上下していない。
「死体役は、動いちゃいけないからね」
その声に振り向くと、ナイフを握りしめて微笑み良美が立っていたのだった。