さくらの花に、愛を込めて。

それからのさくら姫は、
あの日の出来事が忘れられず、
何度も何度も考えました。

あの、禍々しい嫌な雰囲気を漂わせた木は、一体なんだったのか。
ソラ王子は、なぜ、私を殺すことをやめたのだろうか。
なぜ、無害の我が国の使節団員に危害を加えようとするのか。

どれだけ考えても、
答えが出ることはありませんでした。

さくら「…ソラ王子と…お話がしたい…」

考えてもわからないのなら、
聞くしかないと、さくら姫は決心しました。


____…


それからというもの、さくら姫は
いつもソラ王子のことを探すようになりました。

でも、広い城内ですから、
なかなか出会うことができません。



___そんなある日。


さくら姫はいつのまにか日課となっていた散歩をしていました。
すると、

さくら「…あ…!あれはソラ王子…!」


白馬にまたがり、城に戻ってきたソラ王子が目に入りました。
ようやく来たチャンス。
さくら姫は、無我夢中で王子の傍へ向かいました。


ソラ「今回も良く走ってくれたな。パトラ。」

ソラ王子は、優しく微笑みながら白馬の名前を呼び、
その鬣を撫でました。




そのとき___


さくら「ソラ王子…!」


ソラ「…!」


さくら姫が、ソラ王子のすぐ後ろで、
息を切らして立っていたのです。

ソラ「…さくら姫…。どうされましたか。」

目を反らし、冷たくそういうソラ王子。

さくら「……少し。少しでかまいませんので、お話しさせてくださいませんか?」


ソラ「…すまないが、わたしは忙しい。また別の機会にお願いできないだろうか。」


さくら「…今、お話しさせていただきたいのです。」


ソラ「しつこい。今はだめだと__」


なかなか引き下がらないさくら姫をみたソラ王子は
驚いて言葉に詰まりました。

なぜなら、さくら姫が、
静かに涙を流し、まっすぐにソラ王子を見つめていたからです。

その姿が、大変美しく、それでいてすぐに消えてしまいそうなくらい儚く、
ソラ王子は目を奪われていました。

さくら「…王子。無礼を承知でお願いいたします。どうか、少しお話しをさせてください。」


ソラ「……わかりました。少しだけお時間を作りましょう。」

ついにさくら姫の申し出を承諾した
ソラ王子は、そういうと、
白馬から降りました。


さくら「ありがとうございます。」


____
_________……


2人は、庭の一角の花園にやってきました。

ソラ「……それで、話とはなんでしょうか…?」

さくら「…ソラ王子は、なぜあの時、わたくしを見逃してくださったのでしょうか。」


さくら姫が一番に知りたかったこと。
それは、あの日のソラ王子の態度が変わった理由でした。


ソラ「……それは…あなたが知る必要のないことです。」

さくら「…どうしても話してくださらないのですか…。」

ソラ「………」


さくら「……では、ご質問を変えさせていただきます。」


さくら姫は、ソラ王子をまっすぐに見つめて
こう言いました。


さくら「……ソラ王子から、素敵な笑顔を奪っている者の正体は、なんでしょうか。」


その言葉に、ソラ王子は驚きを隠せませんでした。

ソラ「なん…だと…」

さくら「…出過ぎたことを言っておりましたら、大変申し訳ございません。ですが、」


さくら姫は、引きません。

さくら「わたくしは、どうしてもあなた様が、理由もなく無害の人間を手にかけるような、極悪非道な方だとは思えないのです。」


___サァァ……


どこからともなく風が吹き、
さくら姫の美しいピンク色の髪がなびきます。


さくら「あなた様を最初にお見掛けしたとき、白馬を優しく見つめるそのお姿に、わたくしは心のそこから慈愛を感じました。」


はじめて王子を見かけたあの日のことを思い出し、
さくら姫は優しく微笑みました。

さくら「ですが、すぐに冷たく鋭い目つきに変わられてしまうお姿を見て思ったのです。」


ソラ「………」


さくら「何者かが、あなた様から、あの素敵な笑顔を奪っているのでないか、と。」

__ザッ

そしてさくら姫は、一歩前にでると、
こう言いました。

さくら「どうか、あなた様が心に抱えているものを、わたしにも分けてくださいませんか?」


ソラ「…ッ」


さくら姫の言葉をきいた瞬間に、
ソラ王子は、顔を歪めました。