桜の花。

毎年、春を告げ、
儚く散る、

桜の花。


なぜ、桜が春に咲くか、知っていますか?
なぜ、桜が綺麗なピンク色なのか、知っていますか?____


____……


地球が生まれる少し前のこと。
小さな星の小さな国、『ラフリン帝国』に
あるお姫様がいました。

今の季節は、地球の日本でいうところの"春"

さくら「…今日も天気が良くて、気持ちがいい…」


その姫の名は、さくら。
真っ白な肌に、うすいピンクの頬。
頬の色と同じ、ピンクの綺麗な髪の毛。

国民からは、"さくら姫"と呼ばれ、
慈愛に満ちた人格と、
透き通るような美しさから、
皆に愛されているお姫様でした。

年は15歳ほど。
無邪気な一面を残していながらも、
政への向き合い方は、
さすが王家ともいえる立ち振る舞い。

そんな彼女のことを、
皆が愛し、尊敬していました。



__コツッ


王様「さくら姫。今日もお前は美しいな。」

耳馴染みのあるその声の方を振り返ると、

さくら「お父様…!帰っていらっしゃったのね!」

王様が立っていました。


王様「あぁ。隣国との会議が、予定より早く終わったのでな。どうだ、一緒に食事でも。」


さくら「はい…!ぜひ、よろしくお願いします。」


さくら姫は、王様のことが大好きでした。
強く、たくましくありながらも、
国民への愛をかかさず、
真摯に政に向き合い父のことを。

さくら姫の母は、
さくら姫を生むと同時に亡くなりました。
もともと体が弱かったこともあり、
自らの命と引き替えに、さくら姫を生んだのでした。

そのため、王様は、
母の分まで、めいっぱいさくら姫を愛しました。
良いことも、悪いこともきちんと教え、大切に大切に育ててきました。
そして、自らの行いが、さくら姫に影響すると考え、
これまで以上に政にも真摯に向き合ってきました。

そんな王様の背中を見て育ったさくら姫だからこそ、
慈愛の心に満ちた、素敵な姫に育ったのでしょう。

_____

______…


王様「ところで、さくら姫。」


カチャッ_…


ナイフとフォークの音と、王様の声が、
広い部屋に響きます。


王様「今回の隣国との会議の内容で、お前に相談があるんだ。」


そういった王様の声が、
どことなく沈んでいるように聞こえました。

さくら「…ご相談、ですか…どういったものでしょう?」


王様「…今、過激派と呼ばれる国『ロスマン帝国』の動きが、活発化していることは、お前も知っているな?」


さくら「はい。存じております。」


さくら姫の国は、平和をこよなく愛する国。
でも、周りの国も全てがそう、というわけではありません。

"過激派"すなわち、力で権力を手にしようとする国は、この世界にも存在していました。
それが、ロスマン帝国。


王様「うむ。…実は今、ロスマン帝国の動きがさらに激化しており、状況を確認するため、視察を送らねばならなくなった。」


さくら「視察ですか…」


王様「そうだ。そして、ロスマン帝国を刺激しないために、視察団だけではなく、友好関係を望むという意思表明として我が国の姫を送り込む、という要望が上がっておるのだ。」


…その言葉に、
目を大きく見開くさくら姫。


王様「…こちらは、悪意がないことを証明し、我が国に火の粉が降りかからないようにしつつ、ロスマン帝国との関係を深めるためなんだ。…わかってくれるか?」



それは、さくら姫が"人質"として、ロスマン帝国に送り込まれるということを意味していました。