二十歳の夜

 躓いたぼくの耳元で、無駄なことだと君は言ったね。
大人たちと一緒になって一つの自由を求めることが。

 あの日、確かにぼくらは戦って負けたんだよ。
でも負けたことで何かを教えられた気がする。
 毎日が苦しい戦いだった。
先の見えない不自由との戦いだった。
 気付いてみれば手にした物は慚愧と悔しさだけだった。
 大人たちに振り回されただけじゃなかったのか?
先を見ずにぼくらは戦っていた。
何のために? 誰のために?
 確かにそれは後輩のためだったさ。
後輩の未来を拓くためだったさ。
 でもその後輩が別の道を選んだ時、戦いは負け戦に変わった。

 あれから30余年が意味も無く過ぎ去ってしまった。
盛り上がったような、盛り上がらなかったような中途半端な戦いに
全てを賭けていたぼくらも
それぞれの人生を歩いている。

 あの日を思い出す人がどれくらい居るだろう?
 あの日を懐かしむ人が
どれくらい居るだろう?
 高校入試闘争、、、
一度だけ 教育を敵に回した戦い。
ぼくだけはきっと忘れない。
死ぬ日が来ても。