サングラスを買ってしまった。

 甥っ子の虫眼鏡を買いに来ただけなのに。

 一緒について来た姪っ子が、それなら体育祭に来てもいいよ、だって。

 そんなにイケてる?

 古風美人な店員さんも感じいい。

 やっぱイケてるんだ!





 とはいえ見せる相手もなし。

 だがせめて、イケてる俺を馬に見てもらうぜ。

 なけなしの日銭で品定め。

 あれ、なんだ?

 馬の頭上に数字が浮いてる。

 まさか、あの数字が着順なんてことないよな?

 とか言いつつ、まさかに賭けるのが楽しいのだ。

 えっ、嘘だろ!?

 当たった!!

 何度も試しても百発百中。

 以来、サングラスのお陰で金に困らなくなった。





 今日は兄夫妻と一緒に、姪っ子の応援だ。

 1位になったら最新スマホを買ってやると約束をした。

 ま、勝てなくても精一杯やりきればそれでいいんだぞ。

 リレーが進み、アンカーの姪っ子は3位でバトンを受け取った。

 頭の上には数字の1が浮かんでいる。

 ぐんぐん距離をつめ、前走者と競り合う。

 その時、姪っ子と隣の生徒がもつれ、転倒した!

 すぐ立ち上がったものの、姪っ子の数字は3に変わっていた。

 結果はやはり3位だったが、全力で走り悔し泣きする姪っ子を見て、俺は久々に感動した。





 姪っ子にスマホを買ってやった。

 兄貴たちには内緒だぞと、ついでに小遣い10万円をやった。

 弟にも少しは分けてやれよといったら、急に泣き出した。

 そんなに感激しなくても……。



「叔父ちゃん、ごめん!

 初めから、おじちゃんにサングラス買わせて、競馬で当てたお金で、スマホ買ってもらうつもりだった。

 私じゃまだ馬券買えないから」



 えっ!?

 それじゃあ、サングラスの力を知っていて、わざと……?

 恐れ入った……。

 今日びの高校生舐めてたわ。



「叔父ちゃん、もうそれ使わないで!

 使う度に寿命が縮むって店員さんが……!」



 おまっ、人の命をなんだと……!

 ……いや、でも、ろくでなしの叔父の命なんか、スマホの為ならどうってことないよな。

 つい溢したら、さらに大泣き。



「勝手だけど、叔父ちゃんに死んで欲しくないよぉ!」



 わかったよ、もう使わないことにするよ。





 姪っ子にはそう言ったけど。

 実は俺もう、末期がんなんだわ。

 あと3ヶ月。

 どんくらいの金残してやれっかなぁ。