近所の夏祭り。
友達が急に来れなくなった。
せっかく来たのにな。
帰ろうかどうか迷っていると、迷子の子どもが一人で泣いていた。
声をかけたら、あおを落としたって。
青?
スーパーボールとか、水風船のこと?
それとも帽子や、ハンカチ?
お父さんと、お母さんは?
聞いても、一緒に探してって泣くだけ。
困ったなぁ。
祭りの運営本部に連れて行ったけど、その子が私の浴衣の裾を離さない。
仕方ないなぁ。
迎えが来るまで一緒に探してあげるよ。
青、青、青ねぇ……。
お面? 違う。
メンコ? 違う。
抽選会の福引券? 違うか。
あっ、これ!
なんだぁ、ラムネの瓶だ。
落とした青をひたすら探して、稲荷神社の敷地を隅から隅まで歩いたけれど見つからない。
途中お腹が空いちゃって、ふたりでイカ焼きとかき氷を食べた。
思いもよらず、お祭りの雰囲気をちゃっかり味わっちゃった。
なんだかんだ、この子のおかげかな。
それはそうと、この子の親はまだなの?
あ、流石にわたしもそろそろ帰らなきゃまずい時間だなぁ。
本部に連れていくと、その子がまた裾を引っ張った。
「お姉さんの青ちょうだい」
え、これのこと?
今日の髪につけた青色のリボン。
モダンな星モチーフの和柄がかわいくて、今日のために自分でて手縫いしたのだ。
浴衣にも色合わせてして作った、ちょっと手の混んだリボンだ。
……まあ、いいか。
また作ればいいんだし。
その子のことは気になったけど、リボンを渡してわたしはお家に帰った。
なんとなくあの子のことが気になって、翌日神社に行ってみた。
片付けに精を出している運営本部の人に尋ねる。
「ああ、迷子の子。
あの後どっか行っちゃってねえ。
たぶん親か兄弟か自分で見つけて帰ったんだと思うよ」
そっか、無事に帰れたんならいいけど……。
それはそうと、あの子の探してた青は見つかったのかな。
せっかくだし、あの子のためにお祈りしていこうか。
鈴を鳴らして境内に手を合わせた。
帰りがけ、はっとして振り向いた。
忘れてた。
ここのお稲荷さんは青い前掛けをしているんだ。
全国でも青の前掛けをしているのは、ここだけなんだって。
対になっているお稲荷さんの、片方の前掛け。
あれは、わたしのあげたリボンだ。