嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

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 これまで、リーゼロッテの一日はアイリスと一緒に食事を摂ることから始まっていた。テオドールとは一緒に食事をするような仲ではなかったし、ひとりぼっちで食べるのは味気なくて寂しかったからリーゼロッテからお願いしてそうなったのだ。
 それなのに、離婚を申し入れた日以降、テオドールはてのひらを返したようにリーゼロッテと食事を共にするようになった。

 「最近、旦那様の様子がおかしいと思わない?」

 食事を終えて部屋に戻ってきたリーゼロッテは、髪の毛を結い直してくれているアイリスに話しかける。

 「おかしくありません。今までがおかしかったのです」
 「まあ、それは否定しないけど」

 結婚したのに二年間もまともに顔を合わせないのは異常だ。それにはリーゼロッテも同意する。
 最初こそ一体彼の中でどんな心境変化があったのかとびくびくしていたリーゼロッテだが、テオドールは初日以降リーゼロッテに乱暴することはないし、何かを命令することもない。

 なので、ようやく彼との新しい距離感にも慣れてきたところだ。

 「リーゼロッテ様と実際にお会いしてその魅力に魅了されてしまったのですわ。きっと今頃、今までの愚行を悔い改めているところですわ」
 アイリスがぷりぷり怒りながらテオドール批判を始めたので、リーゼロッテは苦笑する。アイリスはリーゼロッテが嫁いできた当初から、テオドールがリーゼロッテを蔑ろにしていたことに憤りを見せており、彼に対して辛口なのだ。

 「とにかく、今まで蔑ろにした分たっぷりと誠意を見せてもらわないといけません」

 アイリスはぴしゃりと言い切ると、リーゼロッテの髪から手を離す。