テオドールは飲んでいた紅茶にむせてゲホッと激しくせき込む。

 「うわっ。大丈夫かよ、テオ」

 祝い花とは、様々な花をリース状にしたもので、何かめでたいことをあった際に飾るイスタールの伝統的な飾りだ。
 テオドールは今朝エントランスホールも廊下も通ったが、祝い花など置かれていなかった。十中八九、セドリック達の仕業だろう。

 「余計なことを──」
 「え? 何か言ったか?」

 カルロはテオドールの言葉が聞き取れなかったようで、怪訝な顔で聞き返す。テオドールはそれに対して「なんでもない」と首を振った。

 「そうか? まあ、何があったのかよくわからんが祝い事はいいことだな」

 カルロは豪快に笑う。
 仮にもテオドールの側近で幻獣騎士団の団長ともあろう男が屋敷の変化を「よくわからん」で済ませていいのかと思わなくもないが、このざっくばらんさがカルロのいいところだ。