「嫌っ!」

 嫌がる女を抱いて喜ぶ性癖はないが、ここでやめるつもりもなかった。
 黙らせようと顎を掴んで口づけると、元々大きなリーゼロッテの目がますます大きく見開かれる。

「んー!」

 どんどんと両手でテオドールの胸を叩くリーゼロッテの両手を纏めて頭の上に捻り上げると、唇をこじ開けて舌を差し入れた。暴れていたリーゼロッテが徐々に大人しくなる。

 詰襟のドレスの下から現れた真っ白の陶器のように滑らかな肌に触れる。温かでしっとりとしていて、いつまででも触りたくなる柔肌だ。そのまま引き寄せられるように唇を這わせると、ふいにリーゼロッテがか細い声でテオドールを呼んだ。

「だ、旦那様」
「なんだ? 懇願してもやめるつもりはないぞ」
「……せめて灯りを消してください」
「なぜ?」

 顔を上げて冷ややかに聞き返すと、リーゼロッテは「恥ずかしいです……」と消え入るような声で言った。頬は真っ赤で、瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。

(これも男を陥落する演技なのか? )

 なるほど、まるで初めてのような態度で男の征服感を満たし、嗜虐心を煽る。事実として彼女の動きは硬く、テオドールの一挙手一投足に戸惑うような男慣れしていない様子が見えた。