テオドールはリーゼロッテの背中と膝の下に腕を入れると、彼女を軽々と抱き上げる。

「旦那様⁉ おろしてください」

 リーゼロッテはテオドールの行動が予想外だったようで、慌ててその腕から逃れようとした。しかし、テオドールは世界最強ともいわれる幻獣騎士だ。リーゼロッテがどんなに暴れたところで、まるで赤子を相手にしているようなものだった。

 そのままリーゼロッテを寝室に連れてゆき、ベッドの上に放り投げる。

「何をなさるのですか!」

 リーゼロッテはベッドマットの上で仰向けに上半身だけを起こし、テオドールを睨み付ける。

「何って、やることはひとつに決まっているだろう。我々は今、夫婦なのだから」
「旦那様、お止めください」
「なぜ? 夫が妻を抱くのに、何の問題が? 全て、俺の意思に従うのだろう?」

 鼻で笑うと、リーゼロッテは明らかに困惑の色を見せた。

「しかし、旦那様は先ほど『離縁したあとは後妻を娶ろう』と──」
「ああ、言ったさ」

 テオドールはふっと笑う。

「お前に飽きたらな」

 その瞬間、リーゼロッテの表情に怯えたような色が浮かんだ。