ここは王都にあるオーバン公爵家の一室。
 今さっき届いたばかりの手紙を読み、リーゼロッテは眉根を寄せた。

「今から王宮に?」

 そこには、是非リーゼロッテと話をしたいのですぐに王宮に来てほしい旨が書かれていた。手紙の差出人は、イラリア=コンローニ。この国──イスタールの第三王女だ。
 部屋に置かれた置時計を確認すると、時刻は午後四時を少し過ぎた頃だった。今から外出の準備を整え馬車で向かうとなると、到着は五時を過ぎるだろう。

「急がないと。ライラ、準備を手伝ってくれる?」

 リーゼロッテは窓際で花瓶の花の手入れをしていた侍女に呼びかける。

「はい。今すぐ」

 ライラは水差しをサイドボードに置くと、すぐにリーゼロッテの外出用ドレスとカバン類を用意し始める。それを鏡越しに眺めながら、リーゼロッテは少し赤みがかった艶やかな金髪をくしでとかした。