「それに、リーゼロッテ様は夜が長くなるはずですよ」
ライラは少し顔を赤らめて、リーゼロッテの耳元で囁く。
(夜が長く?)
意味を理解して、リーゼロッテの顔も自然と赤くなる。
嫁いできた最初の夜。つまり今夜は初夜だ。
(どんな人なのかしら?)
リーゼロッテはまだ見ぬ夫への思いを馳せたのだった。
その晩、リーゼロッテはどきどきする胸を必死に落ち着かせ、夫であるテオドールの来室を待った。
「遅いわね……」
時計を見ると、もうそろそろ日付が変わる。
(何かお仕事でトラブルでもあって、抜け出せないのかしら?)
急に食事も一緒に食べられないと言ってきた位だから、緊急案件なのだろう。
辛抱強く待つが、待ち人は一向に現れない。
段々と待ちくたびれてきて、ふわっとあくびが漏れる。しかし、初対面となる夫を差し置いて妻のリーゼロッテが先に寝るわけにはいかない。
(本でも読んでようかしら)
リーゼロッテは気を取り直し、ベッドから下りると隣の自分の部屋から小説を持ってきてベッドに腰かけた。ぱらり、ぱらりとめくるページが増えてゆき、ときだけが過ぎてゆく。
小説を三分の一ほど読み進めたところで、リーゼロッテは深い眠りの世界へと誘われたのだった。



