どうなっているのか確認しようと立ち上がりかけたちょうどそのとき、ドアがノックされた。

「失礼します。セドリックです」
「晩餐の支度ができたのかしら?」
「それが、本日旦那様は晩餐をご一緒できなくなったそうです。お食事はこちらにお部屋にご用意させていただきます」
「え? そうなの?」
「はい。執務で忙しく、お時間が取れないと」
「そう」

 リーゼロッテは戸惑った。
 夫となったテオドールに、ようやくこの晩餐で会えると思っていたから。

(きっと、お忙しいのね)

 忙しい夫を支えるのは妻の務め。わがままを言ってはならないと、リーゼロッテは自分に言い聞かせる。

「承知いたしました。テオドール様とご一緒できず残念ですが、お仕事頑張ってくださいとお伝えください」

 リーゼロッテは笑顔を作ると、セドリックにそう告げる。
 間もなくアイリスとライラによって準備された食事を、リーゼロッテはひとりで食べる。慣れない場所でひとりで食べる食事は、ひどく味気ない。

「あら? リーゼロッテ様。食欲がありませんでしたか?」

 食事が半分くらい残っているのを見て、ライラが心配そうにリーゼロッテの顔を覗き込む。

「少し疲れているのかも」
「そうですか。では、このあとは私がしっかりとマッサージして差し上げます」
「ふふっ、ありがとう。でも、疲れているのはライラも一緒でしょう? 無理しないでね」
「私は大丈夫です! 明日は帰るだけですから」

 ライラは右肘を折り、まるで力こぶを作るかのようなポーズをとる。