侍女ははっとしたように息を呑み、ぎゅっとその指輪を握り締める。

「お任せくださいませ。必ずや期待に応えて見せます」
「期待しているわ」

 部屋を出て行く侍女の後姿を見送り、イラリアは人知れず口の端を上げる。

(人を従わせるのなんて、簡単なものね)

 リーゼロッテの悪評が社交界に広まるまではそう時間がかからないだろう。

(ふふっ、楽しみだわ)

 アドルフの側からリーゼロッテを排除できる。そう思えば、あんな指輪ひとつなど安いものだ。