リーゼロッテはライラにお礼を言う。
 リーゼロッテがラフォン領に嫁いできた当時婚約していたライラは、あのあと結婚して一児の母になった。定期的にくるライラからの手紙は、少なからずリーゼロッテの癒しになっていた。

 リーゼロッテ達の挙式はラフォン領で最も格式のある聖堂で行われる。
 父親に手を引かれたリーゼロッテはまっすぐに前を見る。祭壇の前には、式典用の黒い軍服を着たテオドールが立っていた。

 ゆっくりと近づき、目が合うとテオドールは蕩けるような笑みを浮かべた。

「必ず幸せにする」
「ふふっ、ありがとうございます。もう飽きても離婚しませんか?」
「そもそも飽きること自体、あり得ない。リーゼロッテこそ、もう離してやらないぞ」
「望むところです」

 ふたりは顔を見合わせ、くすくすと笑う。
 顔が近づき、影が重なった。

<了>