リーゼロッテはシェリーに話しかける。

「旦那様に早く会いたいな」

 唇を尖らせて愚痴を漏らすと、「また可愛いことを」と苦笑交じりの声がした。びっくりして振り向くと、テオドールが獣舎の入り口に立っている。

「旦那様!」

 リーゼロッテは駆け寄る。テオドールが両腕を広げたので、その胸に飛び込んだ。テオドールはリーゼロッテを受け止めると、優しく抱きしめる。

「寂しかった?」
「寂しかったです」

 正直に答えると、テオドールはふわっと笑う。

「随分と遅かったのですね」
「ああ。少し寄りたい場所があってな」
「寄りたい場所?」

 リーゼロッテは小首を傾げる。

「オーバン公爵家に行ってきた」
「オーバン公爵家に?」

 リーゼロッテは驚いて聞き返す。オーバン公爵家はリーゼロッテの実家だ。

「どうしてわたくしの実家に?」