「旦那様?」
「きみがドラゴンに向かって飛んで行ったとき、息が止まるかと思った。死んでしまうと──」

 テオドールはリーゼロッテの肩にかかる髪に顔を埋め、腕はしっかりとリーゼロッテを包み込む。まるでリーゼロッテがそこにいるのを確認するかのような行動だ。

「生きています。卵も返せました」
「結果論だ」
「……旦那様、ごめんなさい」

 リーゼロッテは彼を抱きしめ返す。
 あのときはラフォン領の民と町、そしてなによりもテオドールを守りたくて必死だったが、リーゼロッテがやったことは一歩間違えれば死んでもおかしくないほど危険だったのだ。
 
「もう二度と危険なことはしないと約束してくれ」
「はい」

 どちらともなく顔が近づき、唇が重なった。

   ◇ ◇ ◇