この日、リーゼロッテはイラリアを予定通り事前に決めていた景勝地に案内した。ふたつ目のポイントであるここは、小高い丘に位置する見晴台だ。

「あちらの森は、動物だけでなく多くの幻獣も住んでいるんです。テオドール様の乗るグリフォンも、あの森で保護されました。そして、北側に延びる街道を進むと、イラリア殿下がこれから向かうナリータに続きます」

 リーゼロッテは見晴台から見える景色を説明する。

「グリフォンを森で保護した? 幻獣は幼少期に保護すれば、人に懐くの?」

 イラリアがリーゼロッテに尋ねる。しかし、それは質問というよりは確認しているだけに聞こえた。

「なら、まだ幼獣のグリフォンを捕まえてくればいいのだわ。そうすれば、テオドール様のようにグリフォンに乗る幻獣騎士が誕生するもの!」

 さも名案が思い付いたと言いたげに、イラリアは両手を顔の前で合わせる。

(しまった)

 まさかそんなことを思いつくなんて思ってもみなかった。リーゼロッテは「いけません」とイラリアを窘める。

「幻獣は元来、人に懐きにくいのです。ルカードは特別で──」
「あら? あなたはルカード以外の幻獣をよく知っているの?」
「それは──」

 イラリアに聞き返され、リーゼロッテは言葉に詰まる。

 イラリアの指摘通り、リーゼロッテはルカード以外の幻獣と触れあったことはない。ヒッポグリフなら世話をしていたが、彼らはグリフォンと馬のミックスなので純粋な幻獣ではない。