嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 リーゼロッテは驚いて、まじまじとルカードを見る。
ヒッポグリフのお世話をしていても、喋ったところなど一度も見たことがない。

「ルカードは幼獣のときから人に接して来た。幻獣は頭がよいから、話しかけていると覚えるようだ」
「すごい! こんにちは、ルカード。よろしくね」

 リーゼロッテはおずおずとルカードに笑いかける。ルカードは〈ふんっ〉と言ってリーゼロッテの前に座ると、体を屈めた。どうやら、乗れと言っているようだ。

 リーゼロッテはテオドールにすっぽりと後ろから包まれるように、ルカードに跨る。

「ところで、番って何?」

 リーゼロッテはルカードに尋ねる。

〈幻獣の世界の、嫁のことだ〉

 答えるや否や、ルカードがぐわんと空に飛び立った。

「きゃっ」

 闘技場の中をぐるりと回るだけの低空飛行だった前回とは全然違う。
 どんどん地上が遠ざかり、リーゼロッテは恐怖でルカードの首のあたりの羽を握り締めた。すると、後ろからそっとその手を外され、テオドールに寄りかかるように引き寄せられた。

「ルカードの羽が抜けてしまう」
〈テオの番のか弱い力で抜けるほどやわじゃないぞ〉

 ルカードはすかさずテオドールに言い返す。そのやり取りがなんだかおもしろくて、リーゼロッテはくすくすと笑いだす。

「緊張はほぐれたか?」
「はい」