そこまで言いかけたところで、テオドールは言葉を止めてリーゼロッテをじっと見る。

「リーゼロッテも来るか?」
「え? わたくしもですか? よろしいのでしょうか?」

突然の誘いにリーゼロッテは驚いた。

「ああ、構わない。ルカードに乗って、定期的に息抜きをしているんだ。今日は、領地の西側をぐるりと回るつもりだ」

「領地の西側をぐるりと」

 リーゼロッテはラフォン領に嫁いできて以来、領主館のある町以外に出かけたことがない。テオドールが治めるラフォン領にはどんな地域があるのか、見てみたい気がした。

「ご迷惑でなければ、是非」
「迷惑なわけないだろう。行こう」

 テオドールはリーゼロッテを見つめ、微笑んだ。

 テオドールに案内されてルカードの獣舎に行くと、彼は羽を広げてのんびりと日向ぼっこをしていた。

「ルカード、起きろ。行くぞ」

 ルカードにはゆっくりと顔を上げる。

〈番も一緒か?〉
「ああ」

 テオドールは頷く。

「え? 喋った?」