この日、リーゼロッテは獣舎にヒッポグリフの様子を見に来ていた。六頭いた野生のヒッポグリフは徐々にパートナーが決まってゆき、残るは二頭だけだ。

 干し草を差し出すと、ヒッポグリフ達は尻尾を振って近づいてくる。その様子が可愛らしくて、リーゼロッテは笑みを零した。

「今日はいい天気ね」

 餌をやり終えたリーゼロッテは目の上に手で傘を作り、空を見上げる。真っ青な空には雲ひとつない。
 ぼんやりと空を眺めていると、獣舎の入り口が開閉するガシャンという音が聞こえた。

「誰か来たのかしら?」

 リーゼロッテは入口のほうを振り返る。そして、そこにいた人物を見て驚いた。

「旦那様?」
「リーゼロッテ?」

 テオドールもまたリーゼロッテがいるとは思っていなかったようで、驚いた様子だ。

「ヒッポグリフ達の世話か?」
「はい。とっても可愛いです」

 リーゼロッテは笑顔で今世話をしている二匹を撫でる。二匹は嬉しそうにリーゼロッテにすり寄った。

「旦那様は、お出かけですか?」
「ああ、少しだけ息抜きに──」