リーゼロッテは丁寧に挨拶を返す。カルロはじろじろと上から下までリーゼロッテを見てきた。
「おい。あまり見るな」
「いいだろ、減るもんじゃないし。近くで見ても本当に美人だな」
「だめだ。お前の視線でリーゼロッテが穢れる」
苦虫を嚙み潰したような顔で対応するテオドールを見て、リーゼロッテはなんだかおかしくなる。普段冷徹なイメージがあるテオドールにもこんな姿があるのかと新鮮に思えた。
「どんだけ独占欲強いんだよ」
カルロは呆れ顔だ。
「うるさい。それで、どうした?」
「王都から連絡が来たから早めに連絡を入れたほうがいいかと思ってさ。予想通り、ナリータ国王太子の誕生日パーティーには王女殿下が参加されるそうだ」
「どの王女だ?」
「第三王女のイラリア殿下だ」
(イラリア?)
その名前を聞いた瞬間、心臓がぎゅっとした。
何も悪いことをしていないのに、彼女に目を付けられたばっかりにリーゼロッテは悪女のレッテルを貼られて断罪され、婚約破棄された。
当時のやるせなさが蘇り、リーゼロッテは胸の前で拳を握る。
「リーゼロッテ、大丈夫か? その話は執務室で聞く。食事を終えたらすぐに行くから──」